噯気(げっぷ)

噯気(げっぷ)とは

最終更新日:2025年4月24日
噯気(げっぷ)と

げっぷは、噯気(あいき・おき・おくび)とも呼ばれ、何かを秘密にして全く明かさないことを、「おくびにも出さない」といいますが、その「おくび」は、「げっぷ」のことを指します。
日常でも自然に起こる現象ですが、あまりに頻繁だと病気のサインかもしれません。

1. 噯気(げっぷ)とは

国際的な診断基準であるRome IV基準によれば、噯気(げっぷ)は「食道または胃から咽頭へ空気が可聴的に逆流する現象」と定義されます。健康な状態でも起こりますが、週に3日以上で、日常生活に支障を来すときは「過剰噯気症(excessive belching)」と診断されます。

噯気(げっぷ)の分類

種類 起点 機序 臨床的意義
胃性噯気 一過性下部食道括約筋の弛緩(TLESR) → 食道 → 咽頭 正常な生理現象。GERDに合併しやすい
食道上部性噯気 食道 空気吸引または咽頭からの空気注入により、胃を介さず咽頭へ 行動習慣や心理因子と関連。病的意義大
空気嚥下症(Aerophagia) 咽頭~胃 空気の過剰嚥下により胃腸ガスが増加 放屁・膨満感が主体。噯気はむしろ少ない

日本人の健診受診者では、6.1%が頻回の噯気(げっぷ)の訴えを有しており、比較的女性に多く、機能性ディスペプシアや不安障害、睡眠障害との関連が指摘されていて、決して稀ではない症状です。

2. 生理的と病的の鑑別のポイント

  • 胃性噯気(げっぷ)は食後や炭酸摂取後に1日数回程度なら正常範囲。
  • 病的噯気(げっぷ)は、頻度が高く、日常生活に支障がある、または他の疾患を背景にしている場合を指す。
  • 食道上部性噯気(げっぷ)は意識的あるいは無意識的な行動パターンに起因し、睡眠中には消失する点が特徴。

3. 影響する生活・食習慣

習慣・要因 説明
炭酸飲料 胃内ガス増加による胃性噯気(げっぷ)の誘発
早食い・会話中の飲食 空気嚥下量の増加により噯気(げっぷ)・膨満感が増悪
ストレス、不安 Supragastric belchingの増悪因子。自律神経系を介した影響

4. 病的噯気(げっぷ)に関係する疾患

  • GERD(胃食道逆流症):噯気(げっぷ)は全体の50%に合併
  • 機能性ディスペプシア:Functional Dyspepsia(FD)
  • Gastroparesis(胃無力症)
  • 胃食道逆流症の手術後(Nissen術後)の胃適応障害
  • 食道裂孔ヘルニア、傍食道ヘルニア
  • 不安障害・ストレス関連障害

5. 鑑別診断と検査の進め方

検査選択のポイント

検査 目的
インピーダンスpHモニタリング 胃性 vs 上部性の鑑別(空気の流れの方向とpH変動)
高解像度食道内圧検査(HRM) 食道運動異常の有無、括約筋機能の評価
腹部画像検査(CT、腹部超音波検査など) 腫瘤・胃拡張・裂孔ヘルニアの評価
上部消化管内視鏡 噯気(げっぷ)に伴うGERDや食道炎の評価(Alarm症状があるときに限定)

警告症状(注意すべき病気が隠れている可能性)

  • 不明熱
  • 不明な体重減少
  • 貧血
  • 嘔吐を伴う
  • 消化管出血
  • 家族歴(消化器癌など)

これらが見られるときは、血液検査や内視鏡検査などで、他の病気が隠れていないかを確かめる必要があります。

6. 治療(症状別アプローチ)

胃性噯気(げっぷ)

  • PPI(プロトンポンプ阻害薬)
  • 生活指導:炭酸飲料、ガム、飴玉などの回避、ゆっくりとした食事、禁煙
  • 副鼻腔炎などの治療(後鼻漏による噯気(げっぷ))

食道上部性噯気(げっぷ)(Supragastric Belching)

  • 患者教育:行動起因であることの理解を促す
  • 横隔膜呼吸訓練(Diaphragmatic Breathing):自律神経調整(迷走神経活性の促進)、ストレス軽減・リラクセーション
  • CBT(認知行動療法):症状の自己認知を深める
  • 言語療法:咽頭の異常な運動パターンの矯正
  • 中枢神経調節薬(例:TCA、SSRI、SNRI):症状閾値の上昇、心理的負担の軽減

その他補助療法

  • バクロフェン(Baclofen):GERD併存例での胃性噯気(げっぷ)に限定して使用することがあります。(下部食道括約筋緩和抑制)※ 日本では保険適用外
  • バイオフィードバック:HRMやpHインピーダンスを利用して、症状と客観所見の関連を患者に可視化

参考文献1,2

  1. Moshiree B, Drossman D, Shaukat A. AGA Clinical Practice Update on evaluation and management of belching, abdominal bloating, and distention: Expert Review. Gastroenterology 2023;165:791-800.e3.
  2. Sawada A, Fujiwara Y. Belching disorders and rumination syndrome: A literature review. Digestion 2024;105:18–25.

注意:本文の内容には細心の注意を払っておりますが、あくまで参考情報としてご活用ください。本内容をきっかけとした自己判断等により生じた体調悪化などの不利益の責任を負うものではありません。必ず、主治医・かかりつけ医等、医師の診察により自身の病状を判断いただき、適切な検査・治療方針を決定してください。

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三井 啓吾
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