大腸カメラ
大腸カメラ検査
(下部消化管内視鏡検査)
とは
大腸カメラは、先端に高性能のカメラが付いた内視鏡を肛門から挿入し、大腸の内側の状態を観察する検査です。挿入される内視鏡は太さが1cm程度で、細く柔らかなファイバー素材でできています。直腸、S状腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、回盲部、小腸の一部までの粘膜の映像をモニターに映像を映し出し、直接観察します。必要に応じて拡大したり、画像強調モードなどを使用して精査します。
ポリープ(良性)やがん、出血、感染、炎症、潰瘍等の有無を調べ、腸内に病変が見つかった場合にはそのまま内視鏡で組織を採取し、病理検査に提出します。組織の一部をとって調べる(生検)だけでなく、ポリープや早期大腸がんを内視鏡的にポリープ切除術(ポリペクトミー)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)などで切除することもあります。このような観察と治療を安全におこなうために、検査前には下剤や水を飲んで大腸内を空っぽにし、きれいにしておく必要があります。
なぜ大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)が必要なのか
大腸ポリープ(大腸腺腫)そのものは良性ですが、放置しておくと将来がんに進展する(大腸がん)ことが分かっています。大腸がんは男性の10人に1人、女性の13人に1人がかかり、男性の34人に1人、女性の45人に1人が死亡するとされる大変こわい病気です(がんの統計 ‘19:[国立がん研究センター がん登録・統計])。大腸がんの85%は良性のポリープから進展してがんを発症しています。
大腸カメラは、大腸ポリープの有無を調べるだけでなく、検査時に発見された大腸ポリープをその場で切除することが可能です。大腸ポリープを切除することは、大腸がんの『予防』につながります。
また大腸カメラは小さな早期の大腸がんも発見、切除、治療することができます。大腸がんを早期に発見することができれば、手術や抗がん剤を使わずに、内視鏡のみで治療を終わらせることができます。
大腸ポリープは、加齢によりできやすくなり、40歳頃より増え始めます。大腸がんのリスクも40歳代以降増加し、60歳代で最も多くなります。そのため40歳になったら定期的に大腸カメラの検査を受けることが推奨されています。
大腸ポリープも早期の大腸がんも、自覚症状はほとんどありません。症状のないうちからでも定期的に大腸内視鏡検査を受け、ポリープの段階もしくは早期大腸がんの段階で発見し、切除、治療を受けるようにしましょう。大腸ポリープを切除することは大腸がんの『予防』につながり、また大腸がんを『早期発見』できれば生存率を伸ばし、死亡率を低下させることができます。
また、大腸カメラは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の原因と状態を調べるためにも実施されます。画像で病変の範囲や程度を評価するとともに、組織を採取して炎症の程度と原因を評価します。炎症性腸疾患では長期の経過で大腸がんが発生することが報告されております。大腸カメラは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の診断だけでなく、その後の治療評価とともに、大腸がんの発生がおきていないかを調べる目的でも行われます。
まずはご相談ください
当院の大腸カメラは、眠っている間に検査を受けることができます。また、炭酸ガスを使用するため検査後の腹部の疼痛も大幅に抑えることができます。
しかし、いざ大腸カメラを受けるとなると不安が強かったり、ためらわれてしまう方がいらっしゃるのも事実です。そのお気持ちは非常によくわかります。
消化器症状でお悩みの方は、当院の【消化器内科専門外来】の予約をお取りください。消化器内科専門医が診察し、大腸カメラを受けるべきか否かも含め、症状に応じてご相談に乗らせていただきます。
当院でおこなう
大腸カメラの4つの特徴
1. 静脈麻酔を使用します
内視鏡検査は、少なからず苦痛を感じる検査でした。大腸の中にカメラを進めて行く過程で、お腹が膨らんで苦しくなったり、検査を受ける方には勇気がいる検査でした。
当院では、可能な限り安心して楽に検査を受けていただけるように静脈麻酔を用いた検査をおこなっております。静脈麻酔を使用して、ウトウト眠っている間に検査を実施することで、「検査されていることすら気がつかなかった!」「もう終わったんですか?」とおっしゃられる方も少なくありません。
苦痛が和らぐため、大腸の中をよりくまなく観察することができるようになるというメリットもあります。
医師の検査技術によって患者様の苦痛を減らすことはできますが、それだけでは限界があることも確かです。「苦しい検査は嫌だ」という方に当院では、静脈麻酔を用いた検査を積極的にお勧めしています。
- 静脈麻酔を使用した当日は、車の運転は出来ません。
- アレルギー反応などの副作用が出現する可能性があります。
- 重篤な疾患がある場合や、ご高齢の方にはできない場合もあります。静脈麻酔の使用に関しては、診察の際に医師にご相談ください。
2. 二酸化炭素送気を使用します
大腸はヒダヒダやシワの多い臓器です。ヒダヒダやシワの下に隠れた小さな病変を見つけるために、空気で大腸内を膨らませて観察を行う必要がありますが、体内に残った空気が原因で検査後も腹部膨満感が続き、苦しまれる患者様が少なくありませんでした。
当院では空気の代わりに二酸化炭素を送り込み、大腸を膨らました状態で検査をおこなっています。二酸化炭素は空気に比べ数百倍の速さで体内へ吸収されるため、検査際に生じる腹部膨満による疼痛を大幅に抑えることができるようになりました。二酸化炭素は、体内に吸収されたあとは、呼吸で自然に排出されるため、お体への負担は心配ありません。
当院では胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)のすべての症例に二酸化炭素を使用しています。空気は使用しておりません。
3. 内視鏡専門医が実施します
当院で検査を実施する医師(院長)は、大学病院で25年間にわたりたくさんの内視鏡診断・治療・研究に携わってきたベテラン医師です。日本消化器内視鏡学会の認定専門医・指導医であり、国内・海外での内視鏡指導経験も豊富で、多くの若手内視鏡医の指導にもあたってきました。難易度の高い治療も数多く実施し、多くの早期がんの患者様の治療を行ってきました。検査は、可能な限り短時間で最大限の情報が得られるよう、適切な診断・治療を行い、患者様の身体的な負担を最小限に努めています。
(早期大腸がん)
Rb-Ra, 0-lla+ls, tub1, pTis(M), HM0, VM0, ly0, v0, 110x96mm, (120x110mm)
4. AIによる自動診断システムを導入しています
画像診断はAIが得意とする分野の一つです。大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)も画像診断であり、AIとの相性が良い検査です。
近年、「がんの見逃し」防止の精度をより向上させるために、内視鏡検査のためのAIが開発されました。リアルタイムで病変を検出してくれます。
全ての診断をAIにゆだねるわけではありませんが、病変の見落としを減らし、より正確な診断、治療へつなげていくための補助として、これほど有用なシステムはありません。当院では富士フィルム社の内視鏡診断支援システム(CADEYE EX-1)を導入しています。
高精細な画質とAIによる病変検出や診断支援機能を併用して、最高水準の内視鏡診断を実施しています。
当院の内視鏡システムについて
当院では、最新の富士フイルム社製内視鏡「ELUXEO 7000 SYSTEM」を使用しています。
このような症状の方は
大腸カメラを受けましょう
- 腹痛
- 腹部不快感
- 下痢が続いている
- 便秘が続いている
- 下痢・便秘が繰り返されている
- 便意があっても、なかなか排便できない
- 排便の量が少ない
- 便が細くなった、硬くなった、柔らかくなった
- 便の色がおかしい
- 血便がでた・下血が出た、便に血が混じった
- 粘液便が出た
- 腹部膨満感がある、お腹が張る
- 食欲が無い
- 直腸、肛門部に痛みがある、不快感がある
- おならの回数が多い
- 急に体重が減った
- 大腸がん検診にて、便潜血が陽性だった
- 家族や親戚に大腸がんの方がいる
- 自分自身が大腸がん、直腸がんにかかったことがある
など
上記のような、明らかな症状がある方は早めに検査を受ける必要があります。
ご家族や親戚に大腸がんにかかられた方がいらっしゃる場合は、40歳を過ぎたら大腸がん検診を毎年受診するようにしてください。
過去に大腸ポリープが見つかった方は、大腸ポリープが再発する可能性が高いため、3年に1度は大腸カメラ検査を受けましょう。
大腸ポリープを切除することは大腸がんの『予防』につながり、また大腸がんを『早期発見』できれば生存率を伸ばし、死亡率を低下させることができます。
大腸カメラ
でわかる病気
大腸がん(結腸がん、直腸がん)、大腸ポリープ(良性)過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、急性腸炎(感染性腸炎)、食中毒、腸管出血性大腸菌感染症(O-157など)、大腸憩室、憩室出血、憩室炎、直腸潰瘍、虚血性腸炎、腸閉塞、痔 など
大腸カメラ
検査の流れ
【前処置:自宅でおこなう場合】
- 高血圧・心疾患・喘息・てんかん・精神疾患などの薬は主治医にご確認いただき、内服が必要なときは、朝6時までに内服を済ませてください。
- 朝7時30分に、消泡剤(腸の泡を消す)・制吐剤(吐き気止め)を飲んでください。
- 朝8時から、およそ2リットルの洗腸剤を90-120分かけて全量飲んでいただきます。(早く飲み終われば良いというものではありません。)途中から便意が出現しますので、トイレで排便してください。
- 検査予定の30分前までにクリニックにお越しください。万一、飲み残しの洗腸剤があるときはご持参ください。受付で、予約の際にお渡しした「問診票」(記入済み)をご提出ください。
- 便の状態をお伺いします。下剤を追加したり、浣腸による腸洗浄を追加することがあります。
- 鎮静剤を使用する方は、点滴用の針を腕に刺入します。
- 便の色が「透明〜薄い黄色」になったら、順番に内視鏡検査にご案内いたします。脱水にならないよう、検査直前まで水を飲むようにしてください。
- 鎮静剤を使用しない方は、腸の動きを抑える薬を肩に注射(筋肉注射)をします。
【前処置:クリニックでおこなう場合】
- 朝9時にクリニックに来院ください。(トイレに繰り返し行くことになりますので、脱ぎ着しやすい服装でお越しください。)
受付で、予約の際にお渡しした「問診票」(記入済み)をご提出ください。 - 当日朝の常用薬は、原則、休薬としてください。(特に、糖尿病薬は、絶食のまま薬を服用したりインスリン注射をすると低血糖となり大変危険です。)
- 高血圧・心疾患・喘息・てんかん・精神疾患などの薬は主治医にご確認いただき、内服が必要なときは、朝6時までに内服を済ませてください。
- 消泡剤(腸の泡を消す)・制吐剤(吐き気止め)を内服したあと、およそ2リットルの洗腸剤を120分かけて全量飲んでいただきます。(早く飲み終われば良いというものではありません。)途中から便意が出現しますので、トイレで排便してください。
- 鎮静剤を使用する方は、点滴用の針を腕に刺入します。
- 洗腸剤がすべて飲み終わり、排便に残渣がなく、便の色が「透明~薄い黄色」になったら、順番に内視鏡検査にご案内いたします。脱水にならないよう、検査直前まで水を飲むようにしてください。
- 鎮静剤を使用しない方は、腸の動きを抑える薬を肩に注射(筋肉注射)をします。
【検査方法】
- 検査ベッドで左腕を下にして横になったら、鎮静剤・腸の動きを抑える薬を注射します。
- 肛門部に麻酔のゼリーを塗り、内視鏡を挿入していきます。検査時間は、観察のみなら10分前後、ポリープ切除も行うときは、切除する病変によりますが、概ね20-30分程度です。
- 検査中は適宜、体の向きを仰向けにしたり体位変換をすることがあります。
- 検査終了後、鎮静剤の効果を打ち消す薬を注射したあと、1-2時間は休んでから帰宅となります。完全に鎮静効果が消失するのには、6-12時間程度かかりますので、当日は、乗り物の運転は絶対にお止めください。
大腸カメラの偶発症
大腸カメラの検査にともない、ごくまれに出血や穿孔などの偶発症を起すことがあります。また、下剤を内服することにより腹痛や出血、穿孔を起こすこともあります。出血がみられたり、腹痛を認めましたら、クリニックにすぐに連絡してください。入院や緊急の処置・手術が必要になることがあります。なお、大腸内視鏡検査および治療に伴う偶発症発生頻度は全国集計(2008年から2012年の5年間)で0.011%(およそ1万人に1名の割合)でした。